代表挨拶

原子を使って宇宙の謎に迫る

本領域の趣旨を端的に表現すると、「原子を使って宇宙の謎に迫る」ということに成ります。確かに、宇宙には未だ数多くの未知の部分が存在します。我々は、その中でも、下に記した3つの謎に解決の糸口を得たいと願っています。

  1. 宇宙には反物質が殆ど残っていない。ビックバン直後では、物質と反物質の量は、正確に50%と50%であったのに、反物質が消えてしまったのはどの様な経過からか?このプロセスにニュートリノは関与しているのか?
  2. 宇宙の大部分の物質は、暗黒物質と呼ばれる未知の物質である。この正体は何か?超対称性理論と呼ばれる新しい理論は、これに関わるのか?
  3. 最新の観測によると、宇宙は暗黒エネルギーと呼ばれる未知のエネルギーで支配されている。この正体を解き明かす手掛かりとなる実験事実を実験室の中で得られないか?

 

我々の計画している研究は、上記の問い掛けに対応して3つの柱から成り立っています。計画研究Aにおいては、1の疑問に答えるべく、ニュートリノの諸性質を解明します。また、計画研究Bにおいては、素粒子(クォークや電子)の永久電気双極子能率の有無を測定します。もし永久電気双極子能率が有限の値で確定できれば、その事実は直ちに時間反転対称性の破れを意味し、同時に超対称性理論の解明にも大きな糸口を与えるからです。最後に、計画研究Cにおいては、永久に変化することはないと考えられている物理定数の不変性に疑問符を付け、世界でも最高の精度でこれを検証する計画です。宇宙史的な時間スケールでは物理定数の変化を予言する新しい理論的枠組みもあり、暗黒エネルギーとの関連で注目されています。詳しい内容を知りたい方は、是非とも各計画研究の項を参照してください。

本領域は、同時にいくつかの自負すべき特徴を備えています。まず、上に述べた壮大な宇宙の謎に挑

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戦する手段として、いずれの計画も「原子とレーザー」を用います。原子の物理学とレーザー技術は、この数十年の間、車の両輪のように、互いに刺激し助け合いながら進歩してきました。この成果を、宇宙像の解明に利用しようという魂胆なのです。もう一つの特徴は、各計画研究には、グループ独自の新しい技術や理論が含まれていることです。日本が発信する独創的な技術や理論を武器にして、世界的にもインパクトの大きな成果を得ようと努力していきます。

今後とも折りに触れて、情報を発信していく所存でおります。皆様方の温かいご支援を賜りますようお願いいたします。

2009年9月23日
新学術領域「原子が切り拓く極限量子の世界—素粒子的宇宙像の確立を目指して—」
領域代表 岡山大学 極限量子研究コア 教授  笹尾 登