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計画研究A01班

[ 研究の背景と目標 ]

本研究では、我が国発信の新しい原理「マクロコヒーラント増幅機構」を用い、原子からのニュートリノ対放射を観測することを目指している。この方法は、原子準位のエネルギースケールが対象とする質量スケールと同程度であり原理的に小質量(絶対質量)に感度が良いこと、質量起源がマヨナラ型かディラック型かを決定することが可能な事、またCP非保存に関連するマヨラナ位相の決定に道を拓く可能性がある事など、従来型測定法にない特徴を持つ。本計画研究は、ニュートリノの諸性質を解明することを通し、また、計画研究(B01/B02)がもたらすCP非保存EDM測定の結果を統合することにより、レプトジェネシス理論の根幹部を直接的に検証することを目指す。 

「マクロコヒーラント増幅機構」は、原子を用いたニュートリノ質量分光の研究を進めるに当たり、鍵を握るコンセプトである。この増幅機構は、励起された原子(または分子、以下同様)が、二光子あるいは一光子+ニュートリノ対などの粒子を伴って脱励起する際、ある運動量配位(運動量保存)が実現されると、超放射に似た、しかしより大規模な協同現象が原子集団内に生じ、単位時間当たりの強度が関係する原子数(N)の二乗(N2)に比例する現象を言う。N2効果により巨大な増幅率が期待される。本研究の前半期の目標は、この新しい増幅機構の原理を二光子対超放射過程 (エネルギーのほぼ等しい光子がback-to-backに大量放射される現象(図1参照)PSRと略称)を用いて実証することにある。また、ニュートリノ質量分光に向け、様々な基礎研究を平行して進めることを目標としている。また本計画研究の後半期においては、原子からのニュートリノ対放射を観測することを目標にする。

[研究計画と現在までの成果・見通し]
本領域発足後の研究成果は次のように纏めることが出来る。(1) 理論的研究を進め、マヨラナ位相(α,β)に感度の高い方法や標的を発見した。(図2参照)また二光子対超放射の理論を発展させる中で、ソリトン解等非常に興味深い現象の存在を解明した。(2) Ba/Rb原子を用い、超放射過程自身の基礎的理解を深めると共に、二光子超放射実験に不可欠な準安定状態を生成することに成功した。(図3-図6参照) (3) パラ水素自身を標的として用い、二光子対超放射の観測が可能であることを明確にし、基礎実験を開始した。コヒーラントラマン散乱過程を使い、v=1/v=2の振動モードに励起することに成功した。(A02と協同) (4) 更にマトリックス中に各種の標的原子(Xe,Bi)を埋め込み、その分光的性質を解明した。本研究は、今後①二光子超放射過程を用いて「マクロコヒーラント増幅機構」を実験的に確立する、②計画研究(A02)で開発された「ナノ空間貯蔵標的」を用い、世界初の原子ニュートリノ対検出を実現する、③大まかな質量分光を行い、質量絶対値のエネルギースケールを確定する、等を目指す。

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図1 二光子対超放射(PSR) イメージ図

原子内に協同現象が起これば、エネルギーのほぼ等しい光子がback-to-backに大量放射されると予想される。

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2  Ybよりの対ニュートリノ放射レート vs  放出光エネルギー[eV]; 曲線群は異なるマヨラナ位相(α,β)を表す。正常階層(0,0):青線、逆階層(0,0):赤点線、逆階層(π/2, 0):黒破線、 逆階層(π/4,−π/4):紫破線、最軽量ニュートリノ質量をm1 = 5 meVと仮定し、他は振動実験より定まる質量二乗差を使用。その他のパラメータ:n = 1021 cm−3, V = 1 cm3 , η = 103  (Ref.) M. Yoshimura, “Solitons and Precision Neutrino Mass Spectroscopy”, Phys.Lett. B699, 123-128, 2011

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図3 バリウム原子エネルギー準位図

6s5d1D2D状態)は、寿命1/8秒程度の準安定状態である。D状態からの二光子対超放射を観測し、その性質を調べるのが本研究の最終的な目標である。この目的のために、D状態を素早く、大量に準備しようとするのが基礎実験の眼目である。

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4  気体バリウム実験セットアップ概念図

ポンプレーザー:554nm Pulsed Laser

ストークスレーザー:1500nm CW Laser

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5 遅延時間 vs 原子密度 (実験値:黒、理論値:赤)

超放射遅延時間を原子密度の関数として表示したグラフ。超放射理論とほぼ一致

 

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6 Stokes Laser 照射の影響

励起用レーザーと共に超放射過程を加速するストークスレーザー(1500nm)を入射したところ、角分布が先鋭化し同時に強度が増大。