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計画研究A02班

[目標と戦略]
本研究の目的は、計画研究A01の目的とするニュートリノ質量分光法の開発を容易にするために、(1)量子干渉性の優れた(2)ナノ空間貯蔵標的を開発することにある。前者の性質は「マクロコヒーラント増幅」を実現する上で本質的であり、また後者の要請はニュートリノ対放射を観測する上でアボガドロ数に迫る標的数が必須となることから生ずる。このために、標的原子・分子のナノ空間への大量貯蔵法を開発し、量子干渉性に優れた標的集団の励起法を確立する。特に、希ガスまたはパラ水素固体マトリックスに各種標的を高濃度で埋め込み、ニュートリノ質量分光で必要とされる赤外から紫外全領域を含む電子状態励起の研究を行う。また開発したマトリックスを用いマクロコヒーランスの要求する高度な量子干渉性を検証する。

[成果と今後の見通し]
現在、極低温マトリックスや窒素内包フラーレンなどを用いて、標的サンプルの作成、量子状態の評価および量子干渉性の検証を行っている。また干渉性検証手法の確立に向け、CH3Fガスのフォトンエコー実験を行っている。以下にその成果の主なものを示す。

固体パラ水素は量子固体と言われ、高いコヒーラントを持つ系として知られている。水素はおよそ14K以下で固体となる。我々は図1のような透明なサンプルを作成することに成功している。固体中の水素分子の振動回転状態は量子化されており、ラマン過程により励起することが可能である。この固体パラ水素の振動状態間遷移を用いて対超放射の観測を目指している。その準備段階として固体中の水素分子の振動状態の干渉性をCoherent Anti-stokes Raman Scattering(CARS)法を用いて測定したところ、ν=1およびν=2で10ns程度の長いコヒーランスを示した(図2)。今後は励起効率を向上させ、対超放射観測を目指す。

固体パラ水素そのもののみならず、パラ水素固体に捕捉された異種原子・分子も高いコヒーランスを持つ。我々はニュートリノ質量分光の有力候補であるXe原子や、初めて気相で超放射が観測された分子であるHFなどを固体パラ水素に埋め込むことに成功した。それらの量子状態を分光的手法により評価している。図3は固体パラ水素中のHF分子の赤外吸収スペクトルである。単離されたHF分子の吸収線形および線幅から固体中での分子ダイナミクスについて考察した。今後、対超放射やニュートリノ質量分光にむけ、サンプルの評価を行うとともに、他の有望な系を継続して探索する。

CH3Fガスのフォトンエコーを、波長可変cw赤外OPOレーザーとシュタルクスイッチング法を用いて観測することに成功した(図4)。この手法は電気双極子を持つ様々な分子に適用可能であるため、今後の標的評価においての活躍が期待される。

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図1. 固体パラ水素の写真。無色透明なため反対側の文字が見えている。

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図2. 固体パラ水素の振動状態からのCARS信号。横緩和時間に対応する。

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図3. 固体パラ水素に捕捉したHF分子の赤外吸収スペクトル

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図4. CH3FのrR(0.0)遷移のフォトンエコー。入射レーザーとのビートが観測される。