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計画研究B01班

宇宙で観測される物質/反物質非対称性は現在の素粒子標準理論では説明できず、その枠組みを超える物理の存在が強く示唆される。粒子の永久電気双極子モーメント(EDM)は、標準理論では小さい一方、超対称性など新しく提唱されている枠組みでは測定可能なほどに大きな値をとるため、その動かぬ証拠となりえる。本研究は、光検出・外部帰還型核スピンメーザーという新しい方法を用いて、反磁性原子 129Xe EDM現在の実験上限値から2-3桁下の領域まで探索することを目指している。

 

実験装置の基本構成を図1に示す。これまでに、スピン歳差周波数の時間的振舞いを詳細に測定し、周波数変動の要因として、静磁場用コイルの電流のドリフト、129Xe セルの温度変動、磁気シールドで遮蔽しきれず残った環境磁場の影響、が重要な寄与をしていることを突き止めた。これらの要因を除去するために、まずコイル電流源に高精度標準抵抗を使ったフィードバック制御を導入して長時間変動の 1 桁以上の低減を実現した(2)。次いでセルの設定温度を、光ポンピング効果を損なわずかつ周波数の温度依存性を抑える温度に最適化(~50℃)、さらに実験室に環境磁場打ち消しコイルを設置して(3)環境磁場変動の影響低減を行った。これらの結果、現在までに周波数精度 5.2 nHz を得ている。これは印加静電場E0 = 10 kV/cmのときEDMの値に換算すると dd ~ 5 × 10-28 ecm に相当する。なお、現在の世界最高の上限値は、これより1ケタ大きいd (129Xe)< 4.1×10-27 ecmである。また、EDM 実測定に必要な電場印加のために、セルへの電極導入の技術開発を行った。現在までに、セルに接着部をつくって透明電極を導入、漏えい電流の低減と高真空度シールの実現の目途を得ている(4が、今後の課題として漏えい電流のもう一桁の改善と、接着剤由来の不純物がスピン偏極の経年劣化の原因とならないかの確認が残っている。 EDM 測定の際の磁場モニターとして、NMOR 型高精度磁力計の開発を進め、プローブとなる Rb セルの内壁処理法につき進展がみられた。今後、これら進展で浮かび上がった課題の解決を目差すと同時に、各部を統合して EDM の実測定に向けての準備を進める。

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1. 外部帰還型スピンメーザーのセットアップ

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2. 新旧電流印加システムによる電流安定性()とそれぞれを用いた際のメーザー発振安定性()。青点・赤点がそれぞれ既存の電流源、新電流源でのデータ。

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3. 実験室内の環境磁場変動打消しコイルの概略図()設置したコイルの写真()

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4. 129XeガスとRb原子を封入したEDM測定用電極つきセル()と得られた自由歳差減衰シグナル ()